ヨーロッパで古くから使用されてきた、「生石灰クリーム」と「漆喰」。
どちらも消石灰から作られていますが、何が違うのでしょうか。
今回は、日本で代表的な生石灰クリームの「タナクリーム」と「漆喰」の製造方法や特徴から、違いや使いやすさについて紹介していきます。
タナクリームの製造方法と特徴
日本で販売されている生石灰クリームのなかで、代表的な商品が「タナクリーム」です。
ここでは、タナクリームの製造方法と特徴を見ていきましょう。
タナクリームの製造方法
タナクリームは高知県産の石灰石を原料にして作られています。
石灰石を高温で焼き、性質を変化させて生石灰を作ります。
この過程で、灰色だった石灰石の色が白く変化します。
次に、生石灰に水を加え、「消化」という化学反応を起こします。
生石灰に水を加えると、生石灰は高温になり、砕けながら「消石灰」に変化していきます。
こうしてできあがったものが、私たちがよく目にする、粉末状の「消石灰」です。
できあがった消石灰に大量の水を加え、クリーム状になるまで練ったものが「生石灰クリーム」です。
生石灰クリームのタナクリームシリーズも、このような方法で製造されています。
タナクリームの特徴
タナクリームには、
・タナクリーム 1日仕上げ
・タナクリームN20 + タナクリーム#200
の2種類があり、2つの大きな違いは「初心者のDIY向けか、プロの左官職人向けか」という違いです。
タナクリーム1日仕上げは、シーラーを塗って乾かした上に、コテで二度塗りして完成なのですが、一度目を塗り終えたあとに乾き待ちの時間が必要ありません。
したがって、二度塗りの際には、1回目が乾いていない状態でも濡れるので、1日あれば施工できます。
また、石の粒(骨材)が入っているのでコテ塗りがしやすく、初心者でも簡単に施工することができます。
一方で、タナクリームN20 + タナクリーム#200は、まずはN20をシーラーの上から塗り、しっかりと乾かしてから#200を塗らなければなりません。
N20をしっかりと乾かすのに時間がかかることや、#200はサラっとしたテクスチャーで、初心者には扱うのが難しことから、タナクリームN20 + タナクリーム#200は左官職人向けと言われています。
漆喰の特徴
ここまでは生石灰クリーム(タナクリーム)の製造方法と特徴を紹介しました。
では、漆喰の特徴と製造方法を確認していきましょう。
漆喰の製造方法
漆喰の製造方法は、生石灰クリームとほとんど変わりません。
消石灰を作る作業までは同じ工程で作られますが、生石灰クリームには多量の水を加えるのに対し、漆喰は「スサや骨材、糊(のり)」などを混ぜ込んでいます。
スサや骨材は漆喰のヒビ割れを防ぐ目的で混ぜられ、紙や藁(わら)、繊維など表面の仕上がりによって使いわけが可能です。
糊は漆喰に保水性を持たせ、乾燥速度を遅くするために混ぜられています。
漆喰の特徴
漆喰は、昔は左官職人が鍋で材料を鍋で煮ながら調合していましたが、現代では現場で粉末を水練りするだけで作ることができます。
初心者用のDIY商品のなかには、水練りまでできている「塗るだけタイプ」の漆喰も販売されています。
漆喰もタナクリームと同様に、二度塗りが必要です。
1回目を塗り、1〜2時間経ってから2回目を塗っていきます。
漆喰の詳しい特徴については、こちらの記事をご覧ください。
タナクリームと漆喰の違いとは?
作業工程から見たときのタナクリームと漆喰には、繋ぎとして「水を混ぜるか、スサや骨材、糊を混ぜるか」の違いがあるとわかりました。
ここでは、他に挙げられるタナクリームと漆喰の違いや、使いやすさについて説明します。
基本的には同じ特性を持ち合わせている
タナクリームと漆喰は、原材料と製造方法はほとんど同じです。
そのため、2つの素材に大きな違いはありません。
タナクリームも、漆喰の特徴である「不燃性・消臭・抗菌作用」を持ち合わせています。
クリーム状か粉末状かの違い
製造方法や特徴は同じですが、タナクリームはクリーム状、漆喰は粉末状なので、左官職人が現場で施工するときの「手間」が変わってきます。
タナクリームは生石灰クリームが容器に入っているので、容器を開けたらすぐに塗ることができます。
一方で、漆喰は現場で職人が水と粉末を混ぜ合わせなければなりません。
ただし、DIY用の漆喰にはタナクリームと同じように、容器を開けて塗るだけの商品もあるので、「手間」の観点から見た違いもなくなってきています。
漆喰は繋ぎとして混ぜる素材によって見た目が変わる
漆喰には、繋ぎとして混ぜ合わせるスサの種類によって、表面の仕上がりが変わってきます。
繊維や紙、藁などさまざまなので、仕上げの質感にもこだわりがある施主の場合には、漆喰が好まれるでしょう。
タナクリームと漆喰には大きな違いはない
生石灰クリームのタナクリームと漆喰は、「不燃性・消臭・抗菌作用」などの特性も同じなので、それほど大きな違いはありません。
ただし、左官職人の現場での手間の観点から見ると、タナクリームのほうが扱いやすいでしょう。
また、仕上がりの質感にもこだわる施主の場合は、繋ぎとして混ぜ合わせるものを選べる漆喰が適しています。