あらゆる建築構造物は、経年とともに必ず劣化するため、定期的に修繕工事を実施することで維持保全を図る必要があります。
そして、修繕工事をするうえでポイントとなるのが下地の適切な処理です。
下地処理をするときによく使用する材料として「シーラー」や「フィラー」などが挙げられます。
また、これら材料にも種類があり、非常に高い効果が期待できる「カチオンシーラー」や「カチオンフィラー」などもあります。
しかし、これらがどのような材料で、またどのような違いがあるのかよくわからないという人も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、おもに「カチオンシーラー」と「カチオンフィラー」について、その違いや特徴などを解説したいと思います。
「カチオンシーラー」「カチオンフィラー」のカチオンとは?
「カチオン」とは、プラスの電気を帯びた陽イオンのことをいいます。
一方、マイナスの電気を帯びた陰イオンは「アニオン」といいます。
この「カチオン」と「アニオン」は、磁石のように引き付けあう電気的接着性を有していることが大きな特徴です。
「カチオンシーラー」や「カチオンフィラー」などは、このカチオン特性を材料に付加したものになります。
下地となるコンクリートやモルタル、金属など多くのものは、マイナスの電気を帯びた「アニオン」の状態にあることが一般的です。
そこにカチオン特性を付加した「カチオンシーラー」や「カチオンフィラー」などを使用することで、強力な電気的接着性を発揮し、きわめて安定した下地形成が可能となります。
「シーラー」と「フィラー」の違いとは?
シーラーとフィラーは、下地処理に使用する材料という点で共通していますが、使い方は異なります。
その違いとは、シーラーが「下塗り材」であることに対し、フィラーが「下地調整材」であることです。
それぞれの特徴について、以下にご紹介いたします。
「シーラー」とは?
シーラーは、下地と上塗り塗料の接着性を高めたり、また下地面への吸い込みを抑制したりするなど、おもに上塗り塗料の性能を十分に発揮させるために使用する「下塗り材」です。
シーラーには水性や油性などの種類があり、施工環境や下地の状況などで使い分けられます。
水性のシーラーは、においが少なく扱いやすい材料ですが、吸い込み防止という点では油性に劣ります。
一方、油性のシーラーは、強固に密着することで耐久性を高められるため、劣化が進んだ下地面に適正があります。
ただし、においが強いため屋内での使用には適しません。
また、シーラーと用途が似ているものにプライマーがあります。
プライマーも、シーラーと同様に下地と上塗り塗料をしっかりと密着させるために使用される「下塗り材」のひとつです。
そして、プライマーにもいくつかの種類があります。
例えば、金属部のサビを防ぐ「防錆プライマー」、コンクリートやモルタルの脆弱している下地に対し、染み込みながら強化する「浸透性プライマー」などです。
なお、弊社でも無機質下地専用の水性浸透強化剤「ガッチリ浸透プライマーW/寒冷地」を提供しています。
「フィラー」とは?
フィラーは、下地に存在する凹凸や小さなひび割れなどを埋め、平滑な状態をつくる「下地調整材」です。
おもに修繕工事などは、上塗りの性能を維持し、かつ美しく仕上げるには、下地の精度をいかに高めるかという点が重要なポイントとなります。
その点フィラーは、シーラーよりも粘度が高く厚みもあるため、傷んだ下地を調整し平滑に仕上げることが可能です。
そして、フィラーの多くはセメント系の材料を用いたセメント系フィラーになりますが、そこにカチオン性樹脂を加えたものがカチオンフィラーとなります。
またその他にも、微弾性フィラーという種類もあります。
微弾性フィラーとは、シーラーとフィラーの両方の機能を併せ持つ「下塗り材」で、小さなひび割れ程度であれば隠せる弾性を有していることが特徴です。
ヤブ原産業 カチオンフィラーのご紹介
弊社では、セメント系カチオン性アクリル樹脂モルタル「カチオンフィラー」を提供しています。
「カチオンフィラー」は、セメントおよび無機質骨材を配合した主材パウダーと、カチオン性樹脂の硬化液をセットしたセメント系フィラーとなります。
カチオンフィラーのおもな用途
カチオンフィラーのおもな用途は以下の通りです。
・リシン下地(セメント系は下地強化が必要)の下地調整
・コンクリート、モルタル、ALC、ブロックなどの目潰しと下地調整
・目違い、ひび割れ、段違い、ピンホール、ジャンカなどの下地調整
カチオンフィラーの使用方法
カチオンフィラーの使用方法について、簡単にご紹介いたします。
1 | 下地処理 | まず下地の付着しているほこりや汚れなどをきれいに水洗いで落とします。 このとき、コンクリートやモルタルなど無機質下地が脆弱である場合は、ガッチリ浸透プライマーなどで強化してください。 |
2 | 練り混ぜ | まず、容器に硬化液を70%程度入れ、主材パウダーを徐々に加えながらハンドミキサ-などを使ってペースト状に練り上げます。 さらに残りの硬化液を加えて、施工に適した粘度になるよう調整しながらつくります。 このとき、水は絶対に混入しないでください。 また、一度に混ぜ合わせる量は、可使時間(夏期60分、冬期120分)以内で使い切れる量とすることがポイントです。 |
3 | 塗り | 練り混ぜた主材は、吹付けか、あるいは金ゴテで行い、均一に塗布します。
施工後は、12時間以上の乾燥時間を設けてください。 |
まとめ
「カチオンシーラー」と「カチオンフィラー」は、ともに下地処理として使用される材料ですが、使い方は異なります。
ただし、いずれもカチオン特性による強い接着性が魅力であり、強固な下地と仕上がりを実現するうえで大きな効果が期待できるでしょう。