施主から「古いブロック塀を壊してリフォームがしたい」と依頼されたとき、「わかりました」と、すぐに塀を壊してしまうと施工後にクレームになることがあります。
ブロック塀の所有者が曖昧なまま塀を撤去したり、新たに塀を設置したりすることは「隣人トラブル」へと繋がる可能性があるからです。
この記事では、ブロック塀のリフォームを依頼されたとき、左官職人が最低限知っておきたい知識についてお話しします。
ブロック塀の所有者はだれ?所有権の調べ方
ブロック塀をリフォームする前に、必ず確認しておかなければならないことが「既存のブロック塀の所有権が誰にあるか」ということです。
ここでは、ブロック塀の所有権の調べ方を説明していきます。
ブロック塀が設置してある位置から調べる
ブロック塀の所有者は、塀が設置してある位置から調べることができます。まず、ブロック塀の設置方法は以下の3通りです。
1. ブロック塀の中心が隣地境界線上に重なるように設置する
2. 片方の敷地内に設置する
3. 隣地境界線に沿うように片方の敷地内に設置する
隣地境界線上にブロック塀の中心が重なるように設置してある場合、既存のブロック塀は施主と隣人の「共有物」と推定されます。これは、「民法229条(境界標等の共有の推定)」で定めらている原則です。
2つめ、3つめのように、施主の敷地内にブロック塀が設置されているのなら、原則として施主の所有物とみなされます。
ブロック塀を設置したときに隣人と決め事をしていたか
ブロック塀が隣地境界線上に設置してある場合、設置時に隣人となにか決め事をしていないかを確認することが必要です。
たとえば、「どちらかが設置費用を全額負担し、所有権はどちらかのものとすることにした」「所有権を放棄した」などがあげられます。
相続や贈与によってブロック塀の設置時と家の所有者が変わっていた場合、こういったトラブルが起こる可能性があるので、必ず確認しておかなければなりません。
ブロック塀をリフォームするときに注意しておくこと
ブロック塀の所有者が施主にあるとわかり、リフォームを行うことになったときにもいくつか注意しておくことがあります。ここでは、ブロック塀のリフォーム時に気をつける3つの注意点について説明します。
境界標が設置してあるかどうか
リフォーム前に必ず確認しておかなければならないのが、「境界標が設置してあるか」という点です。築年数が経っている建物の場合、境界標が設置されていないことがあります。
境界標がない場合は、施主に境界標を設置するように伝えてください。境界標がないままブロック塀を設置してしまうと、施工後にトラブルになる恐れがあるからです。
また、境界標が設置されていても、建て替え時に宅地造形で境界が失われたり、ブロック塀の設置時に境界がズレてしまっていることも。
施工後のクレームとトラブルを避けるためには、ブロック塀を設置する前に測量を行い、境界を明確にしておくことが大切です。
隣人と話し合いをしてから設置する
ブロック塀をリフォームする際に一番にしておかなければならないのが、隣人との話し合いです。
塀をリフォームしたい旨を伝え、施主が塀を設置する方向で問題はないのか。施工時には騒音がすることなどを隣人に伝えておかなければなりません。
隣人との話し合いを飛ばして施工してしまい、隣人トラブルになってしまったケースは珍しくはありません。施主に、隣人との話し合いをするように必ず促してください。
ブロック塀を設置する位置
ブロック塀を設置する位置にも注意が必要です。設置位置は先ほど説明した、以下の3通りです。
1. ブロック塀の中心が隣地境界線上に重なるように設置する
2. 片方の敷地内に設置する
3. 隣地境界線に沿うように片方の敷地内に設置する
このなかで一番隣人トラブルになりにくいのが、「施主の敷地内に設置すること」です。隣地境界線より数センチ内側に設置するため、所有権も施主になります。
また、境界線に沿うように塀を設置することも可能です。しかし、設置時に塀の一部分が少しだけ隣家に侵入したなど、施工後にトラブルになることも…
そのため、施主の庭にスペースがある場合は、敷地内への設置を勧めましょう。
ブロック塀の中心が隣地境界線と重なるように設置することも可能ですが、あまりおすすめはできません。
なぜなら、塀が隣人との共有物となり、所有者が変わったときや撤去、リフォーム時にトラブルになりやすいからです。
ブロック塀の設置時、基本的には「塀を設置したい人の敷地内に設置し、費用も負担する」ことを、施主にしっかりと説明しましょう。
トラブルにならないためには隣人との話し合いが必須
隣人トラブルの原因にもなってしまう、ブロック塀。「汚れているから」と、勝手にリフォームしてしまうと隣人と揉める原因になりかねません。
トラブルを防ぐためにも、施主にはブロック塀の所有権や隣人との決め事について説明しておくことが大切です。
施工前にしっかりとした説明を行うことが、施主からの信頼を得るキッカケにもなります。今回説明した内容をしっかりと頭に入れておきましょう。