気温が上昇する季節のコンクリート打設工事は、強い日射の影響を受けひび割れなどのリスクがともなうため十分な注意が必要です。
そして、この暑い時期に施工されるコンクリートのことを一般的に「暑中コンクリート」と呼びます。
「暑中コンクリート」は、品質の低下を防ぐためにも、製造や施工に際して適切な処置をとらなければなりません。
そこで今回は、「暑中コンクリート」とは具体的にどのようなものをいうのか、またひび割れなどのリスクを防ぐための対策などについて解説したいと思います。
暑中コンクリートとは?
暑中コンクリートとは、おもに夏の暑い時期に施工するコンクリートのことをいいます。
日本建築学会の標準仕様書および土木学会の示方書によると、「日平均気温が25℃を越えることが予想される期間」を暑中コンクリートの適応期間としています。
コンクリートは、セメントと水が化学反応を起こす水和反応によって硬化しますが、気温が高い環境では活発化しやすくなることが大きな特徴です。
その結果として品質の低下が起こる可能性がある点は、大きなリスクといえるでしょう。
よって、気温の上昇が予想される場合は、材料や施工について特別な配慮が必要になるのです。
暑中コンクリートのリスクとは?
暑中コンクリートの適応期間中は、いくつかのリスクが想定されます。
おもなリスクとは以下の通りです。
- ひび割れ
- 必要なスランプ値が得られない
- コールドジョイント
ひび割れ
気温が上昇することで水分が蒸発し、体積の減少にともなって、ひび割れを起こすことがあります。
このコンクリートが硬化する過程で急激な乾燥が原因で起こるひび割れのことを「プラスチック収縮ひび割れ」といいます。
「プラスチック収縮ひび割れ」は、とくに気温が上昇する時期に起こりやすいリスクです。
ひび割れは、規模の小さいものであればそれほど品質に影響はないとされていますが、大きいものは劣化を早めてしまう原因になります。
必要なスランプ値が得られない
気温が上昇すると、水和反応が活発になり硬化が早く進むため、必要とするスランプ値が得られない場合があります。
そうなると、流動性が低下することで作業性も悪くなり、さらに時間をロスして硬化が促進されるといった悪循環が生じます。
しかし、硬いからといって水を加えることは、基本的にやってはなりません。
というのも、水分量が増えることにより「水セメント比」が変わり、必要とする強度が得られない可能性があるためです。
ちなみにスランプとは、コンクリートの柔らかさを見るための指標です。
硬いと強度が高くなる一方で作業性は低下し、逆に柔らかいと作業性が上る一方で強度低下につながります。
またスランプ値は、調合管理強度によって最大値が規定されており、その値以下のものを使用することが基本となります。
コールドジョイント
気温が上昇すると、コンクリートの硬化が早く進むため、先に打設した層と後から打設した層が一体化できない現象「コールドジョイント」が起こることがあります。
「コールドジョイント」が起こると、期待する強度が発揮できなかったり、劣化を早めたりするなど、品質に影響を与える可能性があります。
暑中コンクリートの具体的な対策とは?
暑中コンクリートは、品質低下を招く恐れがあるため、特別な対策を講じたうえで打設を行う必要があります。
おもな対策となるのは以下の通りです。
- 練り混ぜから打ち込みまでの時間を早める
- 型枠や鉄筋の温度を下げる
- 打ち込み後は速やかに養生する
練り混ぜから打ち込みまでの時間を早める
気温が上昇するとコンクリートの硬化が早く進むため、時間がかかり過ぎると打ち重ね部分が一体化できなくなるリスクが高まります。
そのため、練り混ぜから打ち込みまでの時間には規定があり、原則としてその時間内で行う必要があります。
なお、日本建築学会の標準仕様書での規定は以下の通りです。
外気温25℃以上:90分以内
つまり、工場で練り混ぜられた時間から打ち込み完了までを90分以内で行わなければならないということです。
これらの作業を時間内に終わらせるには、搬入から打ち込みまでがスムーズに流れるようしっかりと打設計画を立てて行う必要があります。
型枠や鉄筋の温度を下げる
暑中コンクリートのリスクを低減するには、材料自体の温度が上がらないようにすることも重要です。
打ち込む前に型枠や鉄筋に散水するなど温度を下げておくと、これらに接するコンクリートの温度上昇を抑えることが可能となります。
またその他にも、気温が比較的低い早朝や夕方などに施工するという方法も効果的です。
打ち込み後は速やかに養生する
打ち込みが完了したら、表面の急激な乾燥を防ぐためにも、速やかに養生することが重要です。
そして、散水養生や湿布養生などの方法により、構造物を湿潤状態に保つ必要があります。
まとめ
暑中コンクリートは、品質に影響を及ぼすことがあるため、十分な準備をしたうえで施工する必要があります。
とはいえ、対策を行ってもひび割れが発生するケースはあります。
その場合は、状況に応じて補修をするなど、必要な処置を講じましょう。