内装仕上げの「塗り壁」とは?種類やクロスとの比較を徹底解説

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家づくりにおいて、内装の壁仕上げといえばクロスが主流となっています。

一方で、機能性の高さと特有の風合いから、日本建築の伝統の技術といえる「塗り壁」が再び注目を集めています。

では、「塗り壁」とは具体的にどのような仕上げをいうのでしょうか?

また、内装仕上げの主流であるクロスとはどのような違いがあるのでしょうか?

そこで今回は、「塗り壁」とはどのような仕上げなのか、そしてその種類やクロスとの比較についてなど徹底解説したいと思います。

内装仕上げの「塗り壁」とは?

内装仕上げの塗り壁とは、おもにわたしたちの身の回りに存在する自然素材などを使い、左官職人の「塗り」の技術を駆使して仕上げる壁のことをいいます。

また、「漆喰」や「珪藻土」など、仕上げの材料によってさらに細かな種類に分けられます。

過去には、竹を格子状に編んでつくる「竹小舞」を下地として使われることが多く、その上に「下塗り」「中塗り」「上塗り」と幾層にも塗り重ねて仕上げていました。

そうすることで、強く、そして美しい塗り壁がつくれるわけです。

なお、現在では下地に石膏ボードを用いることが一般的となっています。

塗り壁は日本の風土に最適

塗り壁は、古くから日本の住宅に使われてきた歴史があります。

これは、塗り壁が持つ機能性が日本特有の風土に適していることが理由のひとつとされています。

日本特有の風土とは、四季があり、季節ごとに生活環境が移り変わることです。

おもに、夏には高温で湿度が高く、冬になると低温で乾燥する特徴が見られますが、健康で快適に暮らすうえで湿度はきわめて重要な要素となります。

例えば、湿度が高すぎるとカビやダニの発生を促し、一方湿度が低すぎるとウィルスに対する防御作用が効きにくくなってしまいます。

しかし塗り壁は、環境に合わせて湿度の調整を行える点で効果的です。

湿度が高い環境では吸湿し、逆に低い場合は放湿するといった優れた調湿性を発揮します。

塗り壁は室内の空気汚染に効果的

多孔質な素材を使った塗り壁は、室内の有害物質を吸着し無害化する効果が期待できます。

住宅内の空気中にはさまざまな化学物質が存在しているといわれており、「シックハウス症候群」などの健康被害の原因になることもあります。

しかし多孔質素材の塗り壁は、これらを吸着して浄化作用を発揮し、汚染環境を改善することが可能です。

また、細菌やウィルスなども吸着し、不活性化する「抗菌・抗ウィルス機能」を有する素材としても大きな注目を集めています。

内装仕上げの「塗り壁」の種類とは?

内装仕上げの塗り壁には、いくつかの種類があります。

例えば、現在では少なくなった塗り壁として土壁や砂壁などがあり、さらに土壁にも「聚楽壁」「大津壁」「錆壁」などの種類があります。

そして、近年の住宅建築における代表的な塗り壁といえるのは以下の2つになるでしょう。

・漆喰壁

・珪藻土壁

漆喰壁

漆喰は、消石灰に砂やノリ、スサなどを水で練り混ぜてつくる塗り壁材です。

日本では古くから使われてきた材料で、多くの城の壁に使用されていることなどはよく知られています。

また、主成分である消石灰は、二酸化炭素を吸収して硬化するため、施工直後から時間が経過するほど強くなる性質があります。

耐久性にも優れ、不燃材でもあることから、万が一火事が発生したときも延焼を防ぐ効果が期待できます。

珪藻土壁

珪藻土は、海などに生息する植物性プランクトンの一種である「珪藻」の死骸が長い年月を経て堆積したものです。

無数の小さな孔を持つ多孔質な素材であることから、非常に優れた調湿性を発揮します。

近年では、珪藻土の吸水力を活用したバスマットなども登場し、人気を集めています。

また、カラーのラインナップも豊富で、アクセントとしても使えるなど、さまざまな空間演出できる点も魅力のひとつです。

内装仕上げの「塗り壁」とクロスの比較

建築物の壁に使用する仕上げ材の主流といえば、クロスです。

クロスにも種類があり、塩ビ樹脂を原料とする「ビニールクロス」や、紙でできた「紙クロス」、布でできた「布クロス」などがあります。

そして、これらのうち、最も使われているものは「ビニールクロス」です。

一方、近年幅広く見直されている塗り壁ですが、クロスとは特徴が全く異なります。

どのように異なるのか、いくつかの点で比較してみたいと思います。

コスト

コストは、クロスのほうが安くなります。

まず材料が安く、そして短工期でできるため人件費についても抑えることが可能です。

一方、塗り壁は、左官職人の手作業となることから、どうしてもある程度の工期が必要となり、クロスよりも高コストになってしまいます。

しかし、塗り壁は耐久性が高く一度塗ると数十年もつため、メンテナンスを考慮した長期コストでは塗り壁のほうが有利になるかもしれません。

デザイン性

デザイン性は、クロスのほうがバリエーションも豊富で、多くの選択肢から好みのものを選べる点では有利といえます。

カラーや柄など自由に選べるうえ、あらゆる空間演出が可能です。

ただし、塗り壁の手作業ならではの風合いとオリジナル性は、クロスでは表現できません。

また、経年ととともに深みが増していく表情の変化などは、塗り壁が持つ醍醐味のひとつでもあります。

機能性

機能性は、施工するだけでさまざまな効果が期待できる塗り壁が有利です。

例えば、塗り壁を施工した室内は、空気中に含まれる汚染物質が吸着して無害化できるため空気環境の改善効果があります。

また、ペットやたばこのにおいなどを吸着して消してくれる消臭機能も優れています。

クロスの場合、種類によっては化学物質を多く含んでいるものもあり、シックハウス症候群の原因となるケースもある点では注意が必要です。

ただし、クロスにも消臭や防カビなどの機能性を付加したものも多く登場しています。

まとめ

内装仕上げの塗り壁は、日本の風土に適した機能性と表情豊かな特有の風合いが魅力です。

そして、左官職人が手間ひまをかけて丁寧につくることで、ほかにはないオンリーワンの空間となるでしょう。

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