抗菌・抗ウィルス機能を発揮する自然素材「漆喰」の魅力

新型コロナウィルスの世界的な流行により、私たちの生活スタイルは大きな変化を余儀なくされました。

そのことにともない、多くの人の関心を集めているのは「抗菌・抗ウィルス」という機能ではないでしょうか？

そもそも「抗菌・抗ウィルス」とは、細菌の増殖を抑えたり、またウィルスの不活性化を図ったりすることをいいます。

そして、日本建築において伝統的に使われてきた「漆喰」も「抗菌・抗ウィルス」機能を有しているとして注目されている自然素材です。

そこで今回は、「漆喰」の魅力のひとつである「抗菌・抗ウィルス」機能について、深掘りしてみたいと思います。

自然素材「漆喰」が発揮する抗菌と抗ウィルスの違い

漆喰は、非常に機能性の高い自然素材ですが、その機能のひとつに「抗菌・抗ウィルス」があります。

では、そもそも「抗菌・抗ウィルス」とはどのような機能のことをいうのでしょうか？

これはまず、細菌とウィルスというまったく異なる対象へ抗するものであり、それぞれ違った働きがあることを理解する必要があります。

そのため、例えば抗菌効果に優れるものでも、ウィルスに対して同様の効果があるとは限らないのです。

それでは「抗菌」と「抗ウィルス」の違いについて、個別に解説いたします。

抗菌とは、細菌の増殖を抑える機能のことで、存在する菌をできるだけ増やさないようにする機能のことをいいます。

ちなみによく似た効果として「殺菌」や「除菌」などがありますが、「殺菌」は菌を殺すこと、「除菌」は菌を取り除くことで、少し意味が異なります。

また細菌は、細胞がある微生物であり、自ら移動することも可能です。

水分や栄養分があるなど一定の環境が整えば細胞分裂をして増殖しますが、一方で環境が整わなければ死滅します。

とくに細菌の種類によっては、人の体内へ侵入し細胞分裂を繰り返しながら危害を加えるものも存在する点では注意が必要です。

抗ウィルスとは、ウィルスの組織にダメージを与え効力を失わせるといった、いわゆる不活性化させる機能のことをいいます。

つまり、ウィルスが持つ機能を損なわせ、活動停止の状態にするということです。

抗ウィルスを目的として一般的によく行われるのは、アルコールを使用する方法があります。

またウィルスは、細菌よりもはるかに小さく自ら移動もできないなど、一般的には生物としての分類には入りません。

細胞もないことから細菌のように自ら増殖することはありませんが、他の細胞に寄生して増殖します。

遺伝子とそれを守るタンパク質の殻に包まれた構造となっており、外側に「エンベロープ」と呼ばれる脂質膜を持つタイプと、持たないタイプの大きく2種類があります。

ちなみに新型コロナウィルスはエンベロープ型です。

エンベロープ型のウィルスは、アルコールを含む消毒薬を用いることで不活性効果が認められています。

一方で、ノンエンベロープ型のウィルスはアルコールに強いため、次亜塩素酸ナトリウム系の消毒薬を用いて不活性化を図る必要があります。

自然素材である漆喰が、どのように抗菌・抗ウィルス機能を発揮しているのか、そのメカニズムについて解説いたします。

漆喰は、おもに消石灰でできています。

消石灰は水酸化ナトリウムともいい、pH値が12以上という強いアルカリ性を示すことが特徴です。

漆喰の抗菌・抗ウィルス機能は、この強アルカリ性にあることで発揮されます。

というのも、細菌やウィルスなど多くの微生物は、生育するために一定の環境が整う必要があるためです。

その条件のひとつにpH値があり、強アルカリ性を示す環境では、生育の抑制、あるいは不活性化されることがわかっています。

よって、漆喰の主成分である消石灰の抗菌・抗ウィルス効果が期待できるというわけです。

ちなみにpH値とは、酸性、中性、アルカリ性の程度を表す際に使用される単位のことで、0～14までの数値で示されます。

0に近づくほど酸性が強く、14に近づくほどアルカリ性が強いと判断します。

漆喰の表面は、非常に小さな無数の孔が開いた多孔質となっています。

多孔質とは凹凸のある状態であり、表面積が大きくなるため、より多くの物質を吸着し閉じ込めておくことが可能となります。

そして、接触や飛沫によって漆喰表面に吸着した細菌やウィルスは、主原料の消石灰によって強アルカリ性になるわけです。

この吸着性の高さは、漆喰の魅力のひとつで、抗菌・抗ウィルス機能の他にも、「消臭」や「調湿」などの効果も期待できます。

漆喰は、多くの人が注目する抗菌・抗ウィルス機能を持った自然素材です。

ただし、表面に付着した細菌やウィルスに対してのみ効力を発揮するため、当然ですが絶対的な感染対策とはならないことは理解しておく必要があります。

とはいえ、多くの機能性を有しているだけでなく、独特の美しい風合いが演出できることなどは漆喰の魅力といえるでしょう。