床仕上げをする前には、必ず下地調整を行う必要があります。
下地調整の出来栄えは、そのまま完成品質を左右するなど、非常に重要なポイントとなる工程です。
床下調整にはモルタルや土間コンクリートなど、いくつかの種類がありますが、なかでもよく使われるものに「セルフレベリング工法」があります。
「セルフレベリング工法」とは、その名の通り下地面に流し込むことで自らの流動性により水平な状態をつくれるという方法です。
仕上げ工事をやりやすくするうえで非常に優れた方法になりますが、その一方で注意しておきたい点もあります。
そこで今回は、床の下地調整で効果を発揮する「セルフレベリング工法」について、その特徴や注意点を徹底解説したいと思います。
セルフレベリング工法とは
セルフレベリング工法とは、流動性を備えているセルフレベリング材を流し込むことにより、きわめて水平精度の高い床面をつくれる工事のことです。
床面に凹凸が残った状態で仕上げ材を施工すると、下地の凹凸が仕上がりへ反映されてしまうことがあります。
そうなると、光の当たり方で目立ってしまったり、あるいは歩行性に問題が生じたりする場合があります。
つまり、美しく、そして安全な仕上がりを実現するには、下地面を高い精度で水平な状態に調整しておくことが非常に重要なのです。
セルフレベリング工法の特徴について
セルフレベリング工法には、さまざまな特徴があります。
いくつかの特徴について、簡単にご紹介したいと思います。
セルフレベリング材は大きく2種類
セルフレベリング材には、石こう系とセメント系の大きく2種類があります。
石こう系は、セメント系と比べて強度が低く耐水性にも劣りますが、ひび割れにくい特徴があります。
また石こう系は、ビニル床材の下地としては適しません。
一方、セメント系は、石こう系と比べて強度が高く耐水性にも優れますが、コンクリートやモルタルに比べると強度が低くなる場合があります。
その他にも、乾燥が遅いことなどが特徴となります。
セルフレベリング材は平滑性が高い
セルフレベリング材の最大の特徴といえるのは、優れた平滑性です。
床下地調整の方法といえば、コンクリートの直押さえやモルタルの金ごて押さえなどが挙げられます
これらの方法は、いずれも職人の技術に左右される部分が大きく、どうしてもバラつきが生じてしまいます。
ところがセルフレベリング工法であれば、技術や熟練度にほぼ関係なく、きわめて精度の高い平滑な床面をつくることが可能です。
セルフレベリング工法は短工期で低コスト
セルフレベリング工法は、基本的に流し込むだけという簡単な工程で済むため、短い工期で完成させることが可能です。
コンクリートの直押さえやモルタルの金ごて押さえを行う場合は、職人の手で均す必要がありますが、この工程が省けることでコストも削減できます。
ただし、材料コストで比較するとモルタルよりも高くなります。
とはいえ、短工期で人件費の抑制ができるため、結果的にはコスト安になることが一般的です。
セルフレベリング工法の注意点について
セルフレベリング工法は、下地面を高精度に水平な状態につくれますが注意点もあります。
おもな注意点とは、以下の3点についてです。
・下地処理
・気温
・養生
下地処理
セルフレベリング工法を行う前には、適切に下地処理をしなくてはなりません。
墨出しやレベル出し、そして下地面との接着性を高めることを目的としてプライマー塗布などを行います。
しかし、セルフレベリング材は流動性が高いため、隙間があるとそこから漏れ出てしまい完成後にへこみが生じてしまうことがあります。
絶対に漏れることのないようしっかりとチェックし、隙間をモルタルなどで埋める作業も重要です。
また、下地面が雨打たれやレイタンスなどが原因で脆弱な状態の場合、セルフレベリング材を流してもなじみにくく、完成後に浮きなどの不具合が起こることがあります。
このケースは、ポリッシャーなどを使って脆弱部分を削り取る必要があります。
脆弱の程度がそれほど重くない場合は、弊社の水性浸透強化剤「ガッチリ浸透プライマーW/寒冷地」を塗布することも効果的です。
「ガッチリ浸透プライマーW/寒冷地」は、脆弱したモルタルやコンクリートに塗布することで、優れた浸透性を発揮し強化します。
気温
セルフレベリング材は、気温が5℃以下の環境で施工すると、十分な強度を得られないなど本来の性能が発揮できなくなる場合があります。
よって、施工する場所の温度が5℃以下になる場合は採暖して温度上昇を図ること、また日中の平均気温が5℃以下になるようようなら施工を見合わせるなどの対策が必要です。
養生
セルフレベリング材の流し込みが完了したら、一定の養生期間を設ける必要があります。
風が吹き込むとしわの原因となったり、また直射日光が当たると急激な乾燥を招きひび割れを起こしたりするため、窓などの開口部は塞いでおくことが重要です。
まとめ
セルフレベリング工法は、平滑な下地をつくるうえで非常に優れた方法となります。
しかし完成後には、ひび割れや打ち継ぎ部の段差、ピンホールなどの不具合が、少なからず発生することがあります。
不具合が発生した場合は、サンダーで削ったり、あるいは補修材を充填したりするなど、状況に応じて手直しをしなくてはなりません。
この手直しが非常に大変な作業になることもあるため、事前の準備をより入念にしておくことがポイントとなります