建築材料のモルタルには、「ポリマーセメントモルタル」や「樹脂モルタル」など多くの種類があり、シーンによって使い分けることが可能です。
「防水モルタル」もそれらのひとつで、その名の通り防水機能を有するモルタルのことをいいます。
とはいえ、建築物にとって水分は面倒な存在となるケースも多いだけに、「防水モルタル」はどの程度の防水性が期待できるのでしょうか？
また、「防水モルタル」と混同されやすいものとして「モルタル防水」がありますが、これらは別のものとして捉える必要があります。
そこで今回は、モルタルの種類のひとつ「防水モルタル」のおもな特徴や「モルタル防水」との違いについて解説したいと思います。
「防水モルタル」とはなに？
「防水モルタル」とは、無機質高分子や混和剤などを配合することにより、防水機能を付加したものです。
そもそもモルタルとは、セメントに砂と水を加え練り混ぜたものをいい、この一般的なモルタルのことを「セメントモルタル」と呼びます。
また「セメントモルタル」にポリマーを配合したものを「ポリマーセメントモルタル」、セメントの代わりに樹脂（レジン）を加えたものを「樹脂モルタル」といいます。
通常の「セメントモルタル」は、硬化すると水を通しにくくなりますが、実は微細な孔を持つ構造となっているため、基本的に吸水する素材となります。
そのため、雨水などの影響を受けやすいシーンでのモルタル使用には、防水性を強化する必要があるわけです。
「防水モルタル」の用途は？
「防水モルタル」の用途は、おもに防水性を求められる部分への施工になります。
例えば、モルタル外壁の補修です。
モルタルは、ひび割れが起こりやすい素材であるため、長持ちさせるためにも必要に応じてメンテナンスを行わなければなりません。
とくに外壁など雨水の影響を受けるような場所には「防水モルタル」を使って補修することがあります。
また、庭の池などは、モルタルを使ってつくることがあります。
この場合、防水処理をしっかり行う必要があるため、「防水モルタル」を使うと一定の効果が期待できます。
「防水モルタル」の防水性は？
「防水モルタル」は、モルタルに防水機能を付加させたものですが、完全に水分をシャットアウトできるのかといえば、そうではありません。
つまり「防水モルタル」で施工しても、十分な防水性は期待できないということです。
そのため、「防水モルタル」で仕上げを行った場合でも、さらに防水塗装を施すことが一般的な方法となります。
よって、外壁の補修や庭に池をつくる場合においても、通常は防水塗装で仕上げることになります。
「防水モルタル」と「モルタル防水」との違いとは？
「防水モルタル」とは、防水機能を付加したモルタルのことです。
一方、「モルタル防水」とは、建築物の屋上やベランダなどに施す防水工事の種類のひとつとなります。
建築物の屋上やベランダなどに施す防水工事にはさまざまな種類があり、大きく「塗膜防水」「シート防水」「アスファルト防水」の3つに分けられます。
そして、さらに細かな分類があり、「モルタル防水」は、以下の通り「塗膜防水」のひとつである「セメント系防水」に含まれる防水工事の一種です。
「モルタル防水」の防水性は？
防水工事の一種である「モルタル防水」は、他の防水工事と比較しても確実な防水機能が期待できるとはいえません。
「モルタル防水」は、おもに「防水モルタル」で仕上げた防水層のことを指し、非常に簡易的な防水工事となります。
そのため、本格的な防水層と考えることは難しく、万が一問題が起こっても生活上差し支えないような部位へ用いられることが一般的です。
「モルタル防水」の寿命は？
「モルタル防水」の寿命は、設定が難しいとされています。
というのも、モルタルは素材としてひび割れが起こりやすいという特徴を持つことがひとつの理由です。
「モルタル防水」は、ひび割れがなければ一定程度の防水性は機能しますが、いったんひび割れが生じると、その機能は損なわれる可能性は高くなってしまいます。
その個体の不安定さから、「モルタル防水」は寿命設定が難しいわけです。
ちなみに、ウレタン防水やFRP防水は10年程度、シート防水は10～15年、アスファルト防水は15～20年の寿命が期待できます。
よって、漏水があると大きな支障をきたすような部位には、防水性能を十分に発揮できるその他の防水工事を施す必要があります。
「モルタル防水」の注意点
「モルタル防水」は、確実な防水性を期待することは難しいとされています。
しかし、築年数の古い建物では「モルタル防水」で仕上げている部位が多く見られます。
そのため、時間の経過とともに「モルタル防水」の層が躯体から浮いてしまったり、またひび割れが起こったりなどの問題が起こっていることも事実です。
このようなケースでは、症状に応じて補修を施したり、あるいは撤去したりすることにより、新たな防水層を設ける必要があります。
まとめ
「防水モルタル」は、通常のモルタルに防水機能を付加したものです。
しかし、十分な防水性を期待することは難しいため、防水塗装で仕上げることが一般的な方法となります。
また、「防水モルタル」と「モルタル防水」は異なるものとして捉える必要があります。
「モルタル防水」にひび割れなどの不具合が見られる場合は、適切な処理を行い、状況に合わせて対策と検討するとよいでしょう。
