コンクリートの性能を低下させる原因のひとつに「凍害」があります。
「凍害」とは、コンクリート内部の水分が凍結することで生じる悪影響のことをいいます。
いったん「凍害」が起こるとさまざまな症状が現れますが、放置すると強度低下を招くため適切な方法で必要な処置を施さなければいけません。
また「凍害」には大きく2つの種類があります。
それぞれの種類でメカニズムや症状が異なり、さらに進行度合いによっても対応が変わります。
今回は、コンクリートの2種類の「凍害」とはどのようなものでどう違うのか、またそれぞれの症状や補修方法についても解説します。
コンクリートの2種類の「凍害」とは
コンクリートの凍害には大きく2つの種類があります。
その2つの種類とは以下の通りです。
・初期凍害
・凍結融解作用による凍害
初期凍害
コンクリートの初期凍害とは、コンクリートを打設して硬化する前に水分が凍結することで生じる硬化不良です。
通常、工事現場で打設するコンクリートは、工場で製造した後、ミキサー車で現場まで運搬して施工します。
そしてコンクリートは、セメントと水、砂、砂利などを混ぜ合わせてつくられますが、セメントと水が起こす化学反応、いわゆる「水和反応」によって硬化します。
ところが、コンクリート打設後に気温の低い環境が続くと、硬化する前に水分が凍結し「水和反応」が阻害されて十分な強度が確保できなくなることがあるのです。
この現象を初期凍害といい、いったん起こってしまうと計画通りの品質を得ることは期待できません。
初期凍害を防ぐには、コンクリート打設時の気温を考慮すること、あるいは打設後に適切な養生をすることなどが挙げられます。
凍結融解作用よる凍害
コンクリートの凍結融解作用とは、硬化したコンクリート内部の水分が凍結と融解を繰り返すことで生じる劣化現象です。
コンクリートは、経年にともないさまざまな原因でひび割れが起こることがありますが、凍害もその原因のひとつです。
コンクリート内部の水分が温度低下によって凍結するとおよそ9%の体積膨張が生じ、このときにひび割れが起こる場合があります。
ひび割れが生じた部分にはさらに水分が侵入しやすくなり、そこでまた凍結が発生すると体積が膨張しひび割れは大きくなってしまいます。
そして日中、気温が上昇するといったん融解しますが、そこにまた新たな水分が入り込み、凍結、膨張、融解を長期的に繰り返しながら劣化が進行するわけです。
凍害の症状と補修方法について
コンクリートの凍害が起こると一定の症状が見られ、その症状に応じて補修方法を検討することになります。
初期凍害と凍結融解作用よる凍害が起こったときの症状について解説いたします。
初期凍害の症状と補修方法
初期凍害が起こると、コンクリート表面に特有の凍結模様が現れたり、あるいは表面が黒ずんだりすることなどがおもな特徴です。
症状が比較的軽微で表層部のみの範囲でおさまっている場合、その脆弱部分を削り落とし、浸透強化剤を塗布してセメント系補修材などで仕上げます。
症状が重く脆弱部分が深くまで進行している場合、脆弱部分をすべてはつり落とし、浸透強化剤を塗布してポリマーセメントモルタルなどセメント系補修材で補修します。
凍結融解作用よる凍害の症状と補修方法
凍結融解作用よる凍害が起こると、初期段階では細かなひび割れが見られるようになります。
徐々にひび割れの規模が大きくなると、ポップアウト(骨材粒子の膨張による破壊で円錐状に剥落する)やスケーリング(表面が薄片状に剥落する)などの症状が起こります。
さらに進行すると、塊となって剥落することもあるため注意が必要です。
症状が初期段階のひび割れであれば、エポキシ樹脂の注入工法でしっかりと固めます。
エポキシ樹脂注入工法は、ひび割れの奥までしっかり樹脂を入れられるため防水性や強度を効果的に高められます。
ただし、ひび割れ周辺に脆弱な部分があるようなら、必ずはつり落とし、浸透強化剤を塗布してポリマーセメントモルタルなどセメント系補修材で補修することが必要です。
また、とくに凍結融解作用によって表面が剥落している場合、すでに鉄筋が錆びているなど重大な影響が及んでいる可能性があります。
鉄筋が錆びると、徐々に範囲を拡大させながらコンクリートの耐久性を著しく低下させることがあります。
その場合は、鉄筋が露出するまでコンクリートをはつり落とし、錆び落としや防錆び塗装など適切な処理をすることが重要です。
そのうえで、浸透強化剤を塗布してポリマーセメントモルタルなどセメント系補修材で補修します。
まとめ
コンクリートの凍害が発生すると十分な強度を発揮できないうえ、放置すると症状が進行するためリスクは高まります。
コンクリートの寿命は鉄筋の腐食が大きく左右することから、できるだけ早い段階で必要な対策を講じることが重要です。
また補修をするときには、症状に応じた方法で行うこと、そして適切な材料を選択することもポイントになるでしょう。