コンクリート構造物などでひび割れが生じると、状況に応じて適切な補修が必要となります。
とくに危険なひび割れを放置すると、劣化を早め、寿命を縮めてしまう原因となるため注意が必要です。
ひび割れの補修には、いくつかの方法がありますが、なかでも代表的なものといえば「注入工法」と「充填工法」になります。
これらは、いずれもひび割れ補修の方法として有効であり、おもにひび割れの規模によって使い分けられることが一般的です。
そこで今回は、ひび割れ補修の代表的な工法である「注入工法」と「充填工法」について、その内容や手順などを徹底解説したいと思います。
ひび割れのリスクについて
コンクリート構造物などに生じるひび割れは、それほど珍しいことではありません。
ひび割れは、さまざまな原因で起こりますが、大きくは以下の2つに分類できます。
・進行性のないひび割れ
・進行性のあるひび割れ
進行性のないひび割れは、乾燥収縮や水和反応のときに生じる熱によるものなどで、通常、これらは有害なものとして区別されません。
一方、進行性のあるひび割れは、中性化や凍害、疲労によるものなど、おもに劣化が原因であるため、有害なものとして区別されます。
よって、有害なひび割れについては、できるだけ早いタイミングで、そして適切な方法で補修することが重要です。
有害なひび割れを放置すると、徐々に規模を拡大し、鉄筋にまで影響を与えることがあります。
鉄筋が影響を受けると、腐食し膨張するため、内側からコンクリートを破壊するようになりますが、この現象が「爆裂」です。
コンクリートは非常に耐久性に優れることが特徴のひとつですが、その寿命は鉄筋が錆びるまでと考えられています。
つまり、ひび割れのリスクとは、構造物としての寿命を縮める可能性があるということです。
【ひび割れ補修】代表的な工法「注入工法」と「充填工法」について
コンクリート構造物などのひび割れを補修する方法として代表的なものといえば「注入工法」と「充填工法」です。
それぞれの使い分けは、一般的に以下の通りひび割れの規模によって判断します。
・注入工法:ひび割れの幅が0.3mm以上~1.0mm未満
・充填工法:ひび割れの幅が1.0mm超え
なお、0.3mm未満のひび割れは「ヘアークラック」と呼ばれ、補修の必要はないとされています。
ただし、0.3mm未満でも、進行性のあるものであれば、いずれ大きくなる可能性があるため経過観察は必要です。
また0.3mm未満のひび割れであっても補修することはもちろん有効であり、その方法としてはフィラーやセメントペーストのすり込み工法などが挙げられます。
では、「注入工法」と「充填工法」について、それぞれ解説いたします。
ひび割れ補修の「注入工法」とは?
ひび割れ補修の「注入工法」とは、ひび割れ部分へエポキシ樹脂やセメント系の注入剤を注入することで補修する方法です。
エポキシ樹脂などを注入することにより、効果的に構造部を一体化し、耐久性を向上します。
注入方法にも種類がありますが、微細なひび割れでも時間を掛けて奥深くまで注入できる「低速低圧注入工法」が主流となっています。
また、この「注入工法」は、構造物の広い範囲にまでひび割れが及ぶケースでも有効に機能する方法です。
「注入工法」の手順
「注入工法」の一般的な施工手順について簡単に解説いたします。
・清掃
ワイヤーブラシなどを使い下地のほこりやゴミを丁寧に掃除します。
・台座の取り付け
注入器具は、施工マニュアルに則り、ひび割れの幅や壁の厚さなどを考慮し、隅々まで行きわたるよう複数個所へ設置します。
まずは、注入器具を設置するための台座を、適切な位置へひび割れに合わせて取り付けます。
・シール材の塗布
エポキシ樹脂など注入剤を注入したとき漏れ出さないよう、台座の周囲とひび割れ部にシール材を塗布します。
・エポキシ樹脂の注入
台座へ注入器具を設置し、ゆっくりと圧力を加えながら時間をかけてエポキシ樹脂などの注入剤を注入します。
隅々まで注入できたら、24時間以上を目安に硬化養生を行います。
・注入器具などの撤去
養生が完了したら、注入器具やシール材などを除去して完成です。
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カチオン性セメント系クラック補修材の『クラックイレイザー』です。
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混ぜる→流し込む→削る工程の簡単施工です。
ひび割れ補修の「充填工法」とは?
ひび割れ補修の「充填工法」とは、ひび割れ部分に沿ってU字あるいはV字型にカットし、そのなかにシーリング材やエポキシ樹脂などの補修材を充填する方法です。
カットは、ディスクグラインダーなどを用いて行います。
U字とV字のいずれも可能ですが、施工後の仕上がりが安定しやすいU字カットが一般的に行われています。
とくにシーリング材を充填する「Uカットシール工法」などは、広く知られている方法です。
また、「充填工法」は比較的幅の広いひび割れ補修で行われる方法となりますが、注意しなくてはならないのは鉄筋の錆びです。
鉄筋が錆びている場合は、必ず鉄筋の錆び処理を行ったうえで補修しなくてはなりません。
おもに、鉄筋が露出するまで周囲をはつり落として錆びの除去と防錆処理を行い、樹脂モルタルやポリマーセメントモルタルなどで埋め戻します。
「充填工法」の手順
「充填工法」の一般的な施工手順について簡単に解説いたします。
・カッティング
ディスクグラインダーなどを使い、ひび割れに沿ってU字型にカットします。
・プライマー塗布
カットした部分をしっかりと掃除し、プライマーを塗布します。
・補修材の充填
プライマーが乾いたら、シーリング材やエポキシ樹脂などの補修材を充填します。
ポリマーセメントモルタルやフィラーで下地調整を行い、必要に応じて塗装などで仕上げます。
まとめ
ひび割れ補修にはさまざまな方法がありますが、なかでもよく用いられるのは「注入工法」と「充填工法」です。
いずれもひび割れ補修には有効であり、状況に合わせて適切な方法を選択することがポイントとなります。
正しく補修することで、構造物としての長寿命化も可能となるでしょう。