コンクリート構造物で起こる問題のひとつに「コールドジョイント」があります。
「コールドジョイント」が起こると、見た目が悪くなるだけでなく品質にも影響を与えることがあるため注意が必要です。
また「コールドジョイント」の発生を確認したときには、症状に応じて補修など必要な処置を講じなくてはいけません。
今回は、「コールドジョイント」とはどのような現象でどのようなリスクがあるのか、また補修方法についても紹介します。
コールドジョイントとはなに?
コールドジョイントとは、コンクリート打設のとき、先に打ち込んだ下の層と後から打ち込んだ上の層が一体化しなかった継ぎ目のことをいいます。
つまり打設のタイミングが異なるコンクリートの境目ということになります。
コールドジョイントが発生する原因とは
コールドジョイントは、施工段階に原因があることで発生する初期欠陥のひとつです。
施工段階の原因とは、おもに以下の2つになります。
・先に打ち込んだ下の層の硬化が進行している
・適正な施工が行われていない
先に打ち込んだ下の層の硬化が進行している
先に打ち込んだ下の層が、後から打ち込む上の層と一体化できない硬化状況にあるとコールドジョイントは発生しやすくなります。
一体化しにくくなるまで硬化が進行するのは、いくつかの原因が考えられます。
例えば、現場の温度など環境に原因があるケースや、工場から現場までの距離など運搬に原因があるケースです。
コンクリートは生コン工場で製造しミキサー車で現場まで運搬しますが、製造直後から硬化は始まります。
そのため、練り混ぜから打ち終わるまでの許容時間が基準として設けられており、その時間を超えて打ち重ねると一体化できない可能性が高まるため注意が必要です。
なお、日本建築学会の建築工事標準仕様書が定める打ち重ねの許容時間は以下の通りになります
・外気温25℃未満:120分以内
・外気温25℃以上:90分以内
適正な施工が行われていない
コンクリートの打ち重ねで一体化させるためにはバイブレータを使って締め固める作業が必要になります。
この作業が適正でないと、締め固めが十分でない箇所が生じるためコールドジョイントが発生する原因になります。
適正な締め固めの方法は以下の通りです。
・バイブレータを下層のコンクリートに10cm程度挿入する
・バイブレータの挿入間隔の目安は50cm程度以下とする
・バイブレータを垂直に挿入する
「打ち重ね」と「打ち継ぎ」の違いについて
混同されることがある内容に「打ち重ね」と「打ち継ぎ」がありますが、これらはまったく別のものとして考えなくてはいけません。
・打ち重ね:硬化途中にあるコンクリートに対し、新たなコンクリートを打設すること
・打ち継ぎ:硬化したコンクリートに対し、新たなコンクリートを打設すること
「打ち重ね」は、上下層で一体化させることが可能ですが、定められている時間内に打設し終わることがポイントになります。
また「打ち継ぎ」は、上下層で一体化させることが難しいため、構造上影響の少ない位置へ計画的に設けることがポイントです。
なお、コールドジョイントは、「打ち重ね」をするときに意図せずできるものになります。
「打ち継ぎ」とコールドジョイントは、いずれも上下層で一体化できないという点で同じですが、計画的に考慮されているのかという点でまったく異なります。
そのため「打ち継ぎ」は構造に与える影響は少なく、逆にコールドジョイントは構造に影響を与え品質を損ねる可能性が高くなるわけです。
コールドジョイントのリスクとは?
コールドジョイントのリスクとは品質に対する影響であり、その結果として劣化を加速させ寿命を縮めてしまうということです。
コールドジョイントのおもなリスクは、以下のような内容が挙げられます。
・強度低下
・中性化
・水密性低下
強度低下
コールドジョイントは構造上の問題として捉える必要があり、一体化していないことから一般的に強度が低く、ひび割れもしやすくなります。
また、せん断力(構造物に作用するずらす力)が働くと、強度を保つことは難しくなってしまいます。
中性化
コールドジョイントが発生した部分は、健全な部分よりもきわめて早く中性化する傾向にあります。
中性化とは、通常強いアルカリ性を示しているコンクリート内部に空気中の炭酸ガスが入り込むと、反応して徐々にアルカリ性を失っていく現象です。
中性化は表面から少しずつ進行し、時間をかけて鉄筋にまで到達するようになります。
そうなると、鉄筋を腐食から守っている不動態被膜が破壊されるため、錆びを発生させることがあるのです。
鉄筋が錆びると膨張するため内側からコンクリートが破壊するようになることから、コンクリートの寿命は「鉄筋が錆びるまで」ともいわれています。
水密性低下
コールドジョイント部分は、一体化していないことから水密性も低くなります。
水密性が低いということは水分が入り込みやすいということであり、そのため中性化や塩害などの劣化現象を誘発する原因になります。
その結果、鉄筋への影響から錆びを発生させやすくなるわけです。
コールドジョイントの補修方法とは
コールドジョイントの補修方法についてご紹介いたします。
一般的に症状の度合いによって補修方法が変わります。
症状が軽い場合
コールドジョイントの発生が目視で確認できるものの、縁切れが確認できない程度であれば、ポリマーセメントモルタルなどセメント系補修材をはけ塗りして補修します。
症状が重い場合
症状が軽い場合と異なり縁切れが確認できる場合は、Uカット工法が一般的に有効な補修方法となります。
Uカット工法とは、コールドジョイント部分をU字にカットし、シーリング材を充填してポリマーセメントモルタルなどセメント系補修材を薄塗りするという方法です。
またすでに劣化が進行し、鉄筋に錆びが生じている場合は慎重に補修する必要があります。
このケースでは、まず鉄筋が露出するまでコンクリートをはつり落とし、錆び落としや防錆び塗装など適切な処理をしなくてはいけません。
そのうえで、浸透強化剤を塗布してポリマーセメントモルタルなどセメント系補修材で補修します。
まとめ
コールドジョイントは、おもに施工時の問題で発生する初期欠陥で、見た目にもよくない印象を与えるばかりか品質にも影響を与えます。
一般的には強度が十分でないうえ、劣化を加速する原因になるなど、構造物の寿命を縮めてしまうリスクがともなうのです。
適切に補修することで機能維持を図ることは可能ですが、余計なコストがかかるうえ工期の確保も必要になります。
できるだけ発生することのないよう、施工者が十分に注意することが重要です。
そのうえで発生した場合は、適切な材料を使い適切な方法で補修を行いましょう。
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